研修報告

 

5月10日、広島市で開催された、地方議員研究会主催の「教育行政基礎講座」のうち、「小中一貫教育の要点と解説」と「チーム学校の要点と解説」を受講しました。
その内容について報告します。
講師は一般社団法人家庭教育支援センター「ペアレンツキャンプ」の水野達朗氏、大東市の教育委員や、文科省の家庭教育支援手法等に関する検討委員会委員などを務められています。

 

小中一貫教育の要点と解説

 

まずは、「小中連携」と「小中一貫教育」の違いについてわかりやすく説明されました。「小中一貫教育」は「教育目標を統一しているかどうか」であり、施設は関係ありません。「目指すこども像」を共有し、9年間を通じた教育課程を編成し、系統的な教育を目指す教育活動です。
一方、「小中連携」は、それぞれ別の学校であり、教育目標やカリキュラムの共通部分を協働、小中学校が互いに情報交換や交流を行い、小学校から中学校の円滑な接続を目指すもので、「教育目標」は統一されていません。ここをしっかり抑えておくことが重要です。加古川市が取り組んでいる「ユニット12」は、「小中連携」です。

「小中一貫教育」の類型は2つ、「義務教育学校」と「併設型小・中学校」です。大きく違うところは、「義務教育学校」は校長が1人、1つの教職員組織、教員は原則、小・中免許を併有しています。「併設型」は、学校毎に校長、教員組織があり、教員は各学校種に対応した免許を保有しています。9年間の教育目標の設定、9年間の系統性を確保した教育課程の編成は同じで、「小中一貫教育」をより厳格にしたのが「義務教育学校」です。施設形態は「義務教育学校」も「併設型」も、一体型と分離型があります。
小中一貫教育推進の検討の背景として、教育基本法・学校教育法の改正による「義務教育の目的・目標規定」が新設されたこと、「近年の教育内容の量的・質的充実への対応」「児童生徒の発達の早期化」「中1ギャップへの対応」「少子化などに伴う学校の社会性育成機能の強化の必要性」などをあげられました。
平成18,19年に改正された「義務教育の目的・目標規定」は、9年間を1つの目標として教育していく、9年間のこども像を統一すること、9年間を通じた教育活動の充実に向け、系統性や連続性に配慮した教育に取り組む機運が高まってきたのです。
近年の「教育内容の量的・質的充実への対応」とは、平成20年学習指導要領の改訂によります。小学校高学年への外国語の導入や理数教育の充実、その他、消費者教育、環境教育、キャリア教育など数え上げればキリがありません。これを小中学校の教員が連携し、小学校高学年での専門的な指導や、児童生徒のつまづきやすい学習への長期的視点に立ったきめ細やかな指導に取り組むことが求められるようになったのです。
「児童生徒の発達の早期化」は、成長期が早まり、小学生の高学年から中学生にかけての時期に集中し、これに伴って思春期の早期化の指摘もあります。
「中1ギャップへの対応」とは、小学校から中学校に進級した際の、心理や学問、文化的なギャップで、不登校などの原因のひとつとして考えられています。義務教育で最も環境変化が起きるのか小学校と中学校の境目です。小学校は学級担任制で、きめ細かく指導することや、緩やかな生徒指導でしたが、中学校は強化担任制で、教師主導型、定期考査重視、より厳しい生徒指導などがあげられます。
文科省平成26年度「児童生徒の問題行動など生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、小6から中1の不登校児童数は181%増加、いじめもこの境目のときに49%増加というデータがあります。ですが、そもそも中1ギャップを問題にするのかどうかという議論もあります。ここをフラットにしてギャップを回避したとしても、一生のうち環境の変化があるのは当たり前で、成長の過程で段差が必要ではないか、環境の変化に適応できる教育も必要ではないか、という意見です。

 「学校の社会性育成機能の強化の必要性」は、少子高齢化、核家族化、共働き世帯の増加、母子世帯、父子世帯の増加、地域の教育力の低下など、こどもを支える力が弱まり、社会生育性機能が弱まっています。小中一貫教育を推進する狙いは、小学生と中学生が一緒に交流することで社会性などを育むこと、小中一貫したカリキュラム編成に伴い、地域独自の副教科で地域教育を進めることができることや、小中一貫教育と合わせて公共施設の多機能化を進め、こどもと地域の大人の交流を進めるという考え方です。
 小中一貫教育のメリットは、9年間を見通した目標設定と学習指導、小学生と中学生の異年齢交流、教職員の指導方法の改善などがあげられます。デメリットは、小学校高学年のリーダー機会の減少、通学距離延長、教職員の負担増などが考えられます。これまでの日本の教育は、地域間格差がないはずですが、小中一貫教育や義務教育学校ではカリキュラムの組み換えがあり、仮に学校が変わるとそれがずれている場合が想定されることがあるからです。
 現在小中一貫教育実施件数は1,130件(小学校2,284、中学校1,140)、小中一貫教育を実施している市町村は全市町村の約14%の239市町村、小中連携のみは約68%の1,193市町村となっていますが、義務教育学校は現在22校、今後の5年間でさらに100校以上の増、併設型小学校・中学校も現在の115件から5年間で300件以上増える見込みとなっています。
 小中一貫教育の成果については、実施校の88%が認められるとし、主な回答には、中学校進学に不安を覚える児童の減少、小・中の教員間で指導に当たる意識が向上し、共通で実践する取り組みが増えたことなどをあげています。しかしながら、課題も同程度認められ、教職員の負担感・多忙感の解消が進まない、小・中合同の研修時間の確保ができないなどをあげています。

 小中一貫教育に取り組むには、カリキュラムや施設整備計画に目が向きがちですが、実際の学校現場に落とし込むためには、乗り入れ授業や校務分掌、情報共有が効率的に行われる体制作りが重要です。
 その前段階として、小中一貫教育を進めるための、推進委員会を立ち上げなければなりません。委員会には、外部有識者だけでなく、地域住民にも参加してもらうことが望ましく、地域住民や保護者に対する啓発活動が必要です。実践モデル校の選定には、施設の老朽化や、児童・生徒数の減少などで、教育環境の改善が急がれるところが選ばれる事例が多く見られます。
次の段階では、実践モデル校でのフィードバックを活かして、実施エリアを拡大していくこと、小学校・中学校教員免許状の併有の条件整備、そして、小中一貫教育による事例の収集、分析を行うことや、学校評価制度の導入などがあげられます。

ここで、自らが教育委員を務める大東市の小中一貫教育の取り組みを紹介、平成28年に総合教育会議においてモデル校を選定、29年4月から小中一貫教育を実施、31年に効果の検証を行い、32年から他の市域での展開を判断していく計画です。モデル校では、校区としての「めざすこども像」を作成、9年間を系統立てた各教科ごとのカリキュラムを作成することや、小学校高学年で教科担当制を進めます。また、中学校に配置する「推進コーディネーター」を教職員ではなく、別予算での枠組みで配置するとのことでした。

 小中一貫教育を進めることと、学校施設等の整備が同じテーブルで議論されがちです。というのも、少子化による児童・生徒数の減少などによる学校規模の適正化の問題が全国各地で起きています。加古川市内においても、北部地域では1クラス10人未満の小学校があり、今後もその傾向が続くことが想定されます。

研修会では、学校施設の多機能複合化についても掘り下げた説明がありました。公共施設の老朽化は全国的な問題で、公共施設の約4割を占めるのが学校施設です。公共施設マネジメントの観点からも、学校施設の効果的・効率的な整備を進めていくことが必要です。
アンケートによる全国調査を見ると平成26年5月1日現在の公立小中学校施設の複合化事例は、全国で1万件以上、全体の35%を締め、現在も増加傾向です。複合化事例を見ると、図書館、公民館、保育所、老人デイサービス、行政機関などがあり、会派では京都の御池中学校を見学しました。京都市は全市で小中一貫教育を進めており、御池中学は併設型ですが、デイサービスだけでなく、商業店舗等との複合施設としてPFI事業により整備されていました。PFI事業を活用した事例は川崎市にもあり、地域交流センターを併設した施設一体型の小中一貫教育で給食や施設管理を委託しています。

加古川市においては、中学校区に保幼小中連携ユニットを進めており、交流授業や学校支援ボランティアさんなどの協力で教育環境の改善は図られてはいるものの、不登校や学力低下など様々な課題を抱える生徒の減少は見られません。
先述したように、市の北部と南部では学校規模の格差が大きく、小規模校では専科の先生の配置ができないことや部活動の選択にも影響があるなど、課題を抱えています。まずはこどもの教育を第一に考えながら、地域にとってもより良い方策を早急に考えなければならないことをあらためて実感した内容でした。

 

チーム学校の要点と解説

 

 チーム学校は、「世界一忙しい」といわれる日本の教員の「こどもに向き合う時間を」増やすことが狙いです。学校全体をチームとして機能させられるよう、様々な専門スタッフの力を取り入れていこうとする取り組みです。
 こどもや学校を取り巻く社会状況の変化が著しく進んでいます。少子高齢化、核家族化、共働き、母子・父子家庭の増加、地域の教育力の低下などが挙げられる他、学校に対する要望も多様化しており、教職員が本来の業務以外の活動に追われている現状があります。そんな状況の中でも、財務省は、少子化に伴う教員定数を2024年度までに約3万7千人削減する案を提示していることから、別の形で教育の質や課題解決力を担保する必要があるのです。
 学校現場が抱える問題は、不登校児童生徒は20年前の2倍以上、学校内での暴力行為の件数は小学校では3倍、中学校では1.2倍、要保護児童生徒数は約2倍に増えています。要保護児童とは、生活保護を必要とする状態で、厚労省は、こどもの6人に1人が貧困という実態を明らかにしています。
 「チーム学校」の具体的に必要な体制整備は3つ、①新しい時代に求められる資質・能力を育む教育課程を実現するための体制②複雑化・多様化した課題を解決するための体制③こどもと向き合う時間の確保等のための体制です。

①を実現するために、「社会に開かれた教育課程」「アクティブラーニング」「カリキュラムマネジメント」が重要になってきます。「社会に開かれた教育課程」とは、学校で学んだことが社会に直結できるように、勉強が社会の役に立つと思わせるないようにしていくことが大切です。社会や世界の状況を幅広く視野に入れてよりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、それを社会と共有し、連携しながら実現していくことです。
「アクティブラーニング」とは、教員による一方的な講義形式の教育とは異なり、グループディスカッションやディベート、グループワーク等、こども同士で学びあうような、主体的な学習方法で、認知的、倫理的、社会的能力、また、発想力、協調性、独創性を育成します。今後ますます自動化される仕事が増えます。人間でしかできないことを探り、自分たちで考えていく時代です。
「カリキュラムマネジメント」とは、文字通り、カリキュラムを適切に管理し、学習者の実態に合わせて意図的・計画的に構成し、カリキュラムのPDCAサイクルで、運営、実践、評価していくことです。これを実現するために、専門スタッフによるサポートと、校長のリーダーシップに基づく学校のマネジメント強化が必要になります。

 ②の複雑化・多様化した課題を解決するための体制として、心理や福祉等の専門性が求められています。学校の役割が拡大し、業務量が増加している背景には、家庭や地域の教育力の低下や児童生徒のへの指導の困難化、グローバル化や知識基盤社会科に伴う新しい教育(環境・情報・消費者教育等)への対応、保護者対応、説明責任等、教員に過度な負担が掛かっています。

③の体制が必要な背景には、教職員総数に占める教員以外のスタッフの割合は、アメリカ約44%、イギリス約49%、日本が約18%と著しく低い現状にあります。以上の理由等から、学校の教職員構造を転換し、学校の教育力及び組織力を向上させ、一人ひとりのこどもの状況に応じた教育を実現させる目的でスタートしたのが「チーム学校」というわけです。

チーム学校を実現するための3つの視点は、①専門性に基づくチーム体制の構築、②学校のマネジメント機能の強化(校長がリーダーシップを発揮できる体制)、③教員1人1人が力を発揮できる環境整備です。
①を実現する教員以外の専門スタッフとは、スクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)、ICT支援員、学校司書、部活動外部指導員、ALT(外国語指導助手)などがあげられます。SCは臨床心理士等で心の専門家であり、不登校の専門家ではありません。起立性障害という診断を付けられることがありますが、多くは学校に行きたくないから起きられないのであり、起きられないから学校に行けないのではありません。心の問題ではなく、家庭環境など具体的な事象を解決するのが福祉の専門家であるSSWです。加古川市でも28年度からSSWの配置を順次進めており、福祉施策に繋がるなど成果が上がっていますが、財政事情により配置の拡充は困難な状況です。
SSWの重要性と合わせて説明されたのがICT支援員です。ICTを活用した授業をサポートする業務で、機器やソフトウェアの設定や操作、メンテナンス、活用の助言、デジタル教材作成などの支援を行います。アクティブラーニングにはICTの活用が重要です。
学校司書に関しては、講師が教育委員を務める大東市の事例を紹介されました。学校司書は、もっぱら学校図書館の職務に従事する司書で、図書館担当の事務職員という位置付けで、設置は努力義務です。司書教諭は12学級以上の学校には必ず置かなければなりませんが、専従ではなく、通常の教諭が兼任しており、常時携わることは困難です。大東市では、学校司書を2名配置し、司書教諭と連携しながら、「学校図書館運営全体計画」を作成し、計画に基づき市立図書館司書とも連携して学校図書館の運営を行うなど、機能を充実させています。
その他、特別支援教育に関する専門スタッフ、部活動支援スタッフ、ALTの活用等、多彩な人材を活用することで、学校の教育力を高める取り組みを紹介されました。

②の学校のマネジメント機能の強化とは、学校が地域とも連携しながら、1つのチームとして機能するように、学校のリーダーシップ機能や学校の企画調整機能、事務体制を強化することや、学校に関わる全ての職員がチームの一員であるという意識を共有させる必要があります。それを実現するために、管理職の適材確保、主幹教諭制度(ミドルリーダーの活用)の充実、事務体制の強化が求められます。
まずは、校長や教頭に求められる資質や能力を明確化し、教職員に周知すると共に、管理職の養成等に活用すること、校長がリーダーシップを発揮し、副校長や教頭の複数配置など、校長の補佐体制を強化する取り組みの検討、また、教頭らが力を発揮できるよう、教頭と事務職員の分担の見直しや主幹教諭の配置等の取り組みを進めることなど、学校における管理職のあり方を見直す必要や、校長裁量経費の拡大等の学校の裁量拡大を推進することが求められます。
③の教職員1人1人が力を発揮できる環境整備として、人事評価制度の活用や教職員表彰制度、業務環境の改善、教育委員会等による学校への支援の充実を提案されました。文科省では、平成28年度より弁護士や校長OBを「学校業務改善アドバイザー」に任命して、全国の教育委員会に派遣する事業を始めています。成功事例を実践事例集としてまとめ、全国への周知を進めるのがねらいです。

 チーム学校は、校長を中心とした学校マネジメント体制の強化、専門スタッフの活用で学校の課題への対応力アップ、そして、教員を「授業・学級経営・生徒指導」に専念させることです。現在取り組んでいるユニット12を進化させるために、コミュニティスクールの要素を取り入れてボランティアスタッフを増やすこと、SSWの効果を全ての教員に理解を広げて活用すること、教育委員会と福祉部・こども部との連携の強化などを求めていきます。